Interview

【「動物が好き」が原動力。2018年動物愛護法改正にむけての思い 衆議院議員 松野頼久】

衆議院国会対策委員長に就任したばかりの松野頼久衆議院議員は、取材当日も来客が絶えなく訪れる中、自身の議員室へ笑顔で私たちを迎えてくれた。

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現在、平成30年(2018年)改正をめざして、動物愛護法正式名称「動物の愛護及び管理に関する法律」)の見直しへ向けた検討が既に始まっている。

動物愛護法の主たる目的が「心身の苦痛を感受する存在」である動物たちの福祉にすえられ、販売される動物たちや見世物にされる動物たちをめぐる不適切な状況が改善されるだけではなく、終生飼養されない実験動物や畜産動物についても、更なる法改正が求められている。この動物愛護法改正に向けて、党派を超えて集まった「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」中の一人、松野頼久代議士。

松野議員が動物愛護問題に携わるようになったのは十数年前。新聞の1面トップに犬猫38万頭を殺処分という、非常に衝撃的な記事をたまたま読んだことで、国会で何かできることはないかという思いでスタートしたという。

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私たちは「動物」の中でも、一番身近な「犬・猫」に対して特に熱い思いを抱いてしまうが、「動物」を取り巻く産業は実に多岐にわたり、ペットはその中でも愛玩動物と呼ばれるごく一部にすぎない。だれもが自分は「残虐な行為に荷担などしていない」と思いがちだが、すでに多くの動物たちの犠牲の上に、私たちの今の生活が成り立っていることを忘れてはならない。そして、政治家が、動物愛護問題に取り組むにあたり、「人気取りだ」と言われがちではあるが、「動物愛護問題」と「政治の票」というのは実はあまり関係ないのだという。

選挙には「何が直接票につながるか」というマーケティングが行われているが、その中に「動物」というキーワードは全く入っていない。

先に触れたとおり、動物問題は経済の真ん中にあり、そもそも関わること自体を拒む人も多い。特に「動物愛護」に関してはややこしいと感じる人が多いのも事実。その中で、党派を超えて「動物」のために一肌脱ごうと、積極的に動く議員が増えてきたことは、喜ばしいことでもある。今回はその中のお一人でもある松野頼久衆議院議員にお話を伺った。

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■「動物を取り巻く環境が変わってきたのは、本当にここ数年。」と、松野議員は口火を切った。

松野「先日、一般社団法人全国ペット協会の新会長に就任した、大手ペット販売を手がけている「ペットの専門店コジマ」の小島章義会長が、「コジマでは売れ残った動物達を終生飼養するための施設を作ったが、そこにかかる経費は年間3億円以上。ペットの販売と飼養を行っているため、ペット生体販売で採算が取れなくなってきたのも事実。」と自らの口で語ったことも最近の大きなトピックスではないでしょうか。生体販売業界のボスが自ら採算が取れなくなったと言ったんですよ。こんなことは一昔前ならありえない発言です。今は時代の流れもあり、世論も大きく動かせるようになってきた。私自身も動物愛護の問題に携わってきて十数年たちますが、「動物」には犬猫だけではない多くの問題がありすぎて、一つ一つ解決していくにはとにかく時間がかかるので、まずは目の前にある「事実」からやっていこうと考えています。」

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■松野議員がここ数年で急に「動物愛護に関する風向き」が変わったと思う理由はなんでしょうか。

松野「平成12年4月、地方分権一括法が施行され、国と地方の役割分担の明確化が図られたのですが、その地方での裁量にかなり温度差がありました。そんな中、ここ数年は、地方の首長が立ち上がることで一気に風向きが変わりました。小池東京都知事をはじめとし、各都道府県知事が公の場で「殺処分ゼロにしましょう」という声をあげ、立ち上がったのです。各自治体のトップが動かなければ動かないのがよくわかりますでしょう。それまで殺処分が何千頭とあった地域であっても、知事の一声で殺処分が止まるのですから。これは、知事に誰かが「殺処分の現状」を耳に入れたことで一気に変わったのだと思います。こうしてトップの「耳に入れる」「知らせる」ことがとても大事なのだと思います。いくら国が大きな法律を構えても、動物愛護法が改正され、罰金なども重くなったのですが、なにしろ「地方分権」ですから、その法律を行政が運用しなければ、「結局、動物愛護法って何なのだろう?」という声があがります。その温度差は、地域ごとの行政のトップの「さじ加減」が全て。これは動物愛護活動を行っている人なら誰もが感じているジレンマではないでしょうか。当然こうした温度差についても専門家が審議を重ねているのですが、実際、環境省がなかなか動きません。とはいえ、環境省も2020年に向け「殺処分ゼロ」を発表したりしているのですが...。

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■環境省が積極的にすぐに動かない理由はなんだと思いますか?

松野「そうですね、環境省が動かない理由の一つには、政権与党の動物業界(医療や産業動物含む)とのつながりが長期に渡るからだと思います。いまはもちろん「動物寄り」の与党議員もいますが、先にも申し上げた通り、「動物」というとペットばかりではなく命あるもの全て」にあたるため獣医業界畜産酪農業界、医療業界、製薬業界....すべてに関わってくるわけですから、関わりのある人も多く、これが「既得権利」と言われるものとすればそうなのだと思いますし、皆、身動きが取れずにいるのが現状なのだと思います。」

▲牛、豚、馬、羊、鶏などの家畜のほか、医薬品、化粧品などの動物実験に使用される動物ほか、革産業、動物園、水族館など、私たちの身の回りには犠牲の上に成り立っているものであふれている。その中のほんの一部が愛玩動物なのだ。

松野「実際、動物愛護管理法の動物取扱業に関しては、日本でも現在、3万6,000件くらいの業者がいるわけですけれども、その中で本当のごく一部に満たない業者、あるいは一部の人間のために、業界全体が常に悪く言われている部分もあります。当然、悪い業者は徹底的に取り締まっていかなければなりません。私は特に生体の繁殖から流通、小売りまでにかかわる第一種動物取扱業者への認可を強化したいと思っています。ペットショップや繁殖業者を目の敵にしているわけではありません。今の大量生産、大量消費という形を改めて、きちんとやっていってほしいと思っています。

松野「現実には、同じ業者が何回も問題を繰り返す。これは完全に動物愛護管理法違反で、私は事業の取り消しをするべきだと思います。その点、野党はそうした関係との「つながり」が、希薄なので動きやすいという部分があります。だから、もし、政権が変わった日には、世の中の動きがガラッと変わるのは間違いない。そのくらい極端に違いがあるといってもいいくらい。地方行政の温度差をなくすことが難しい理由も、結局はその地域のトップが「動物が好きか嫌いか」というのは、実は大きく影響しているのではないかと思います。

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■実際に私たちが感じている行政による「温度差」は、まさに「人のさじ加減」ということでしょうか?

松野「その通りです。当然、多くの皆様が感じている「ジレンマ」、動物虐待に対して行政が動かないといったような多くの問題、法改正の際に厳しくなれば良いのですが...。愛護活動家の方の中には、公の場での発言の端々に上げ足を取るような言動や行動をとる人もいますが、どう解決していくか、とにかく私は「みんなで地元のトップに言い続けること」だと思っているんです。行政を訴えることと、知事などのトップに言い続けることは、違うんです。行政との喧嘩は良い結果を産まないことの方が多いのですすべてを一度に解決でき、皆が思うような理想通りになればどれだけいいかという思いなのは同じ。それでも前に進まない理由はまさに先に言った通りです。」

松野「そして、いま一部の地方で問題提起されている「野犬」も問題ですね。飼育放棄や避妊去勢をせず繁殖、遺棄されたと思われる犬も多いが、中には、とても野生とは思えない「プロットハウンド」「ビーグル」「セッター」「ポインター」といった明らかに狩猟犬として飼育されていた痕跡のある犬や、鹿や猪といった大きな獲物を狙うため、人為的に改良された闘犬犬種を交配させた大型雑種犬が保健所に収容されている問題もあります。」

▲狩猟が解禁されている山の周辺地域では狩猟ではぐれたり遺棄された狩猟犬が人里に降りてきて空腹状態で保護されたり、保健所に収容され、その多くが人知れず保管期限を迎え殺処分されている現状がある。このセッターも道路をフラフラになりながら歩いて、車に轢かれそうになったところを目撃していた後続車に保護された。

松野「大型犬に関しては、私も熊本で収容された土佐犬を見たことがあります。とても人懐こい子だったのですが、この子を譲渡して、万が一、事故が起きた時に保健所は責任の所在が問われるわけです。「可哀想という思い」だけでは判断できません。事故が起きないことをだれもが願い、生かしてあげたい、譲渡したい気持ちは山々ですが、特定の危険犬種(闘犬など)とよばれる犬種に関しては、どの行政も慎重になり、譲渡が難しいこともあります。犬種自体、突発的に強い攻撃性が出る者も多いので、そもそもこうした犬種を取り扱う者に対して、厳しい規制を設けるべきだとも思っています。また猟友会に所属している猟師すべてに、猟銃免許交付の際、同時に犬を使用して狩猟する場合、犬もすべて申請を行なわなければいけないようにしていかなければいけませんね。」

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環境省なども、「猟師が減っている」ということで猟友会に強く言えないのも事実かもしれませんが、猟師が飼養する犬がずさんに管理され、無登録で繁殖、販売、狩猟に使用され、不要になれば遺棄される。その犬達が、人里に下りてきたり、野犬化したりして保健所に収容されているケースが多々見受けられるのは大きな問題ですね。

▲神奈川県で大規模シェルターを運営するKDP(Kanagawa Dog Protection)には、神奈川県内で放棄された狩猟犬が多数保護されている。首に発信機をつけたままの犬も保健所に収容されたこともあるが、保健所は元の飼い主が特定できていたものの、猟師へのお咎めは無しだった。

松野「都市部に比べて、地方では野犬がまだまだ多い。本当はすべて人の問題、認可するのも法で裁くのも、遺棄するのも虐待するのも、適正に繁殖、販売しているのもみんな人。国で一律の法律をつくることは大切だが、結局、実際に「運用」するのは「地方行政の仕事。」知事などの首長が、しっかり立ち上がるには、その地域ごとの政治家にしっかり声を届け、言い続けることで風向きが変わりますよ。

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■2017年7月14日衆議院第一議員会館大会議室で開かれた院内交流会「2018年動物愛護管理法改正に向け」にて、熊本県動物管理センター内で被災猫などを県に無断で数十匹処分した件で、松野頼久衆議院議員が「熊本動物管理センターを訴えないで頂きたい。」との発言に批判が相次ぎましたが。

▲熊本県動物管理センターは2016年7月、地震後の殺処分停止期間にもかかわらず、被災猫14匹をセンターの管理を委託されている熊本県弘済会が県に無断で殺処分した。※写真の猫は東京犬猫日和が撮影したもので当該猫ではありません。

松野「何度も申し上げているのですが、実際、熊本もまだまだ動き始めたばかり。昨年、県のセンターで不適切な行為があり、内容は把握していますが、私が「職員を訴えないでほしい」と言ったことは誤解も多い。やっと変わってきた場所なんです。今までずっと年間4千頭を処分してきたセンターなんです。熊本市のセンターは年間500〜700頭が収容され、職員は20名ほどいますが、そことは違い、熊本県のセンターは熊本県内の郡部などからかき集められ、年間4千頭収容されるのに職員はたった3名です。この3名というのは殺処分をしていたから3名で人員が足りていたということでもあります。長年、殺処分は業者に業務委託されていました。それがある日突然、熊本知事が「殺処分ゼロ!」と宣言し、それはとても素晴らしいことで、私も知事から連絡が来た時には驚きましたが、そうして方向転換が決まった日から、そこに動物があふれました。名しかいない職員があたふたしながら世話を行いますが、間に合いません、見かねたボランティアさんが手伝ってくださった中で、だれもが手一杯の状態から、不適切な自体が起こってしまったことだと思います。」

▲保健所でもボランティアを積極的に施設内に受け入れるところも増えてはいるが、収容されている動物に対しての世話は、職員だけではまかないきれないのが現実。部分的に作業を業務委託をしている保健所も多い。

松野「しかし、そこで起きてしまった出来事に対して、拳を上げて「言い続ける」のと「裁判で訴える」のでは大きな差が出てしまうのでこれだけは言わせてください。訴えると裁判所で裁かれます。これでもし、裁判官が「この熊本動物管理センターでの殺処分は妥当だ。」と判決を出してしまうと、ここで「判例」ができてしまい、せっかく知事が「殺処分ゼロ」と宣言したものが覆されてしまうのです。せっかく前を向き始めた事実は一定の評価をしてほしい、そうやってみんなで良いところも認めながら、悪い部分は「言い続ける」ことで一つ一つ解決していけるようになってほしいんです。訴えて行政と喧嘩をしてしまうと、やっと開いてきた行政の扉がまた閉じてしまう可能性が高くそれは悪循環でしかないとうのです。皆さんの怒りはわかります。そして、命を落としてしまった動物たちに罪はありません。」

松野「でも例えば皆さんが憎むペット業界を成長させたのも、行政に持ち込まれる命も、もともと私たちの責任であることも自覚しなければならないと思います。自分の責任を顧みず、行政だけに責任を押し付けず、お互いに反省すべきところをしっかり自覚しながら、徐々に良くないと思われるものが、淘汰されるようしていってはもらえませんか?時間はかかりますが、皆さんの協力も必要です。」

松野「私も自分が動物好きだから、時間ができれば動物愛護の集会へ足を運び、法律の専門家やオピニオンリーダーとなる方々と一緒によりよい動物愛護法改正に向けて、日本での動物への環境が良くなるよう十数年動いています。これは、お金にも票にもなりません。「動物が好きだから。」という気持ちだけがそうさせています。

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東京犬猫日和

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Interviewer,Writer :Emi Sekiguchi

Photo :Keiji Katsuba

資料協力:KDP(Kanagawa Dog Protection)

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松野頼久 衆議院議員

1960年9月19日(56歳)

熊本県菊池郡菊鹿村(現・山鹿市)

慶応義塾大学法学部卒

父は松野頼三氏。

民進党所属の衆議院議員(6期)

民進党国会対策委員長

衆議院科学技術・イノベーション推進特別委員長

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