猫120匹 強制退去 猫屋敷になってしまった住人…埼玉県深谷市

2016年11月インターネット上で埼玉県深谷市の小島進市長に殺害予告をしたとして埼玉県深谷市の無職の男(55)が逮捕された。→「どうなる置き去り猫たち 飼い主が埼玉・深谷市長脅迫容疑で逮捕 「120匹いる」と当人」(2016.11.21 産経ニュースより)不起訴処分で釈放。

埼玉県深谷市在住の男性(55)は、働ける健康状態ではないため生活保護費を受給して暮らしていたが、約8年ほど前から、公園などで拾ってきた野良猫や近隣住民から託された猫を自宅で「保護」し、世話をしてきたという。

生活保護費だけでは、多くの猫たちの世話をする金銭的余裕がなかった男性は、ネット上で保護猫支援の募金などを募り、「猫の保護活動」を続けた。この支援金を深谷市は収入とみなし、生活保護を停止。さらに、支援金と重複して受給した約100万円の返還を請求した。

男性は「そもそも野良猫が増えたのは行政が招いたこと。誰もやらないからやっているだけで、深谷市はおかしい。」と自らの主張を訴え続けてきた。それに賛同した支援者が、男性と野良猫を支えてきたようだが、その支援者が送金してきた支援金が生活保護打ち切りの決定打になってしまった。

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家賃滞納が続き、2017年2月9日裁判所より強制執行勧告が行われ、3月9日ついに強制執行による退去となった。

強制退去勧告の前日、この家はもぬけの殻になっていた。近隣住民によると、男性は支援者に支えられ、猫の保護活動を継続するため、多くの猫たちとどこかへ引越しをしていたという

執行官たちが室内に入ると、家の中にびっしりいたはずの猫たちの姿はなかったが、捕獲し損ねたのか、室内に1匹の猫がいた。この猫は待機していた猫の保護団体が捕獲に成功、無事に保護された。

室外にはビニール袋に包まれた段ボールが山積みになっており、その中には原形をとどめない猫の死骸が複数入っていたという。執行前日に男性が室内にあった猫の死骸をまとめて段ボールに入れていたのが複数の目撃者、支援者によって確認されている。

強制執行によりトラック2台分の家財道具やゴミなどが撤去されたのち、家主からの許可を得て、家の中に入ると、ハエが勢い良く出てくるとともに、強烈な異臭が鼻をついた。

床には、糞尿、柱は猫たちが爪研ぎをしたのか深く削れていた。

天井にはハエ取り紙が多数ぶら下がっており、びっしりとハエが張り付いているのが確認できる。

キッチンもご覧の通り。どこを見ても不衛生極まりない状態だった。

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「(猫を)助けるために必死」「野良猫問題はみんなの問題。ゴミ片付けるの(みんなで)手伝えばいい」「家の中は一番安全」「里親には出さない」「窓を閉め切りにできれば臭いは出ない。冷暖房が必要。その電気代出せよ」「びた一門なくなっても保護しない理由はない」「行政が動けば猫たちが助けられる」「(逮捕中の支援は)現金6千万円。ドライフードが大型15トントラック3台分で45トン。缶詰が4トントラック2台分。」「医者行って、感染症や待ち時間の体力の低下、往復の温度差や振動やメンタルのリスクを考えたら、自分で入れてあげた方が圧倒的にリスクを回避出来る」「薬のキレを良くする為に通常の倍量を投薬している」犬猫の殺処分をゼロにしたい!という思いは強く、「避妊・去勢手術をする為に(野良猫に)餌を与え続け、慣れて捕獲出来るようにしている」

(上記動画:Abema Wave)

どれも真実かどうかは定かではないが、事前に男性自身が受けていた、複数のマスコミへのTV取材での男性の言動だ。

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2010年頃、男性は「里親募集掲示板の設置」を市に依頼したり、保護活動者の支援を受け、猫を里子に出したり、細々ながら応じていたようだが、現在は里親を探して猫の数を減らすよう勧められても、1匹たりとも手放す気がなく、逮捕当初は猫全頭殺処分して欲しいと市に対し申し出ていたという。この男性の支援者からは、「誰かがやらなければならない」「見捨てるのか」「支援を止めたら、猫が死ぬ」と声があがった。

男性が2016年、殺害予告で逮捕・拘留された際、電気、ガス、水道は料金未納により供給停止の状態、水道だけは深谷市の恩情で無償供給されていたという。この間、長年、男性に指導を続けてきた、埼玉動物指導センターの職員が餌と水などの世話をするため男性宅に通った。

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男性が猫の保護活動として、最初に受け入れてきた10頭程度の猫は不妊・去勢手術を行ってきたようだが、その後、増えた猫に関しては未不妊・未去勢だったが(ボランティア証言)、男性はオスとメスの部屋をわけることで「適正管理」を行ってきたという。

また、ノミの駆除、ワクチンなどといった医療措置については、病院に連れて行くこともあったが、インターネット上で薬を購入し自分で「治療処置」を行ったこともあったという。現に強制執行後、室内に残されていた冷蔵庫などからは、複数の医療器具や投薬に使っていたと思われる薬などが残されていた。不衛生な環境から猫風邪が蔓延し、数頭の仔が亡くなり、現在も風邪をひいている仔が多数確認できたという。(ボランティア証言)

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猫は2011年で54匹程。2016年には120匹に。猫の他に亀、負傷したカラス2羽も飼育していた男性は、近隣支援者の話によると「生き物に優しい、とても親切な良い男性。」だという。

その一方で、深谷市に男性が転居してきた際、女性の同伴者がおり、数回、女性がこの男性から暴力を受けたといい、目が充血し、顔を腫らした状態で支援者の元に駆け込んできたことがあったという。逃げてきた女性は「男性に暴力を振るわれた、助けてほしい。」と支援者に懇願したが、最後にかけこんできた日が元旦だったため、「あなたも実家に帰りなさい。」と追い返してしまったのだという。その日を境に、女性の姿を見なくなったので「とても心配している。」と支援者の一人は話した。

生活保護を打ち切られ、家賃の支払いが滞り、ライフラインが止められると、男性は更に病気の猫の写真を掲載するなどし、ネットで支援を募り続けた。

男性宅には支援されたと思われる複数のゲージ、フードの袋、猫砂、伝票がついたままの段ボールや支援者からの手紙なども散乱していた。ゲージの中には糞尿の山と、まだ比較的新しい猫用フードと、大量のゴキブリの卵(黒いつぶつぶがゴキブリの卵。1つの卵の中にはゴキブリの幼虫(15~40匹程度))が入っており、このゲージには数日前まで猫がいたという。男性が保護していた元気な猫達はみな丸々と太っており、食事には困っていなかったようだが、体調の悪い猫に関しては十分に手当てができていたかというと定かではなく、不衛生な環境が感染症の温床になっていた可能性も否定できない。

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実際、この男性宅周辺で「保護しなければならない猫」がどれほどいたのか、近隣住民に話を聞くと、「野良猫に特別困っているわけではないが、野良猫を見つけると男性が捕獲して連れて行ってしまう。」のだという。

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この男性のように、日本だけではなく、世界中でゴミを収集したりする人が多く存在する。

精神保健の分野で教鞭をとる大学教授の話によると、いわゆる「ゴミ屋敷、猫屋敷」のケースのように、不衛生で強烈な悪臭を放っているのにもかかわらず、本人は全くそれに動じることなく収集を続け、衛生観念等の正常な精神状態が保てなくなっている場合、「Hoarding disorder (ホーディング障害)、統合失調症、成人の発達障がい、アスペルガー症候群」の可能性があるという。

人間関係が築けず、独特の価値観をもつので、世間からは「社会的常識がない」「話が通じない」「変わった人」と見られることも多い。孤独を好み、退屈せず、一つのことにこだわりを持ち、徹底的にのめり込むのが特徴だという。

本人の自覚症状はなく、権力の介入は、迫害と捉え、過度な行動をとることがあり、それが「悪いこと」と理解しない。こうした精神疾患のほか、痴呆など物忘れ、住居のゴミ屋敷状態に陥ることがあるという。

本人が自ら病院に受診するということは殆どなく、家族や専門家に連れられてくるケースでないと、医療機関では対処ができないのが現状だという。医療、行政、保健所などといった連携が早期に取れると良いのだが、日本では現状、法的手段がないのが問題だ。

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この問題について、3月9日の強制執行に埼玉県として早急に、動物指導センター等関係機関に働きかけられるよう現場で待機していた埼玉県議会議員 細田よしのり氏は「このような事態になり、重く受け止めている。殺処分を無くすためにはこういった多頭飼い(アニマルホールディング)にも対策が必要であると再認識しました。条例ができるよう、検討していきたい。」と語った。

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日常的にネット上で猫の様子を伝えていたこの男性。ネットで集まった支援金について、猫のために送金した数万円で携帯電話を購入したこともあったという(支援ボランティア証言)。

実際にいまも3台の携帯電話を保持しているという男性。送電が止められている間、支援者宅にて充電を行い、ネットを閲覧したり、自身の主張を発信している。

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所有権の問題などから、法的手段の対処方法が見つかりにくい「ゴミ屋敷、保護動物のキャパオーバー」による諸問題は、全国各地で起きている。新しく飼い主を見つけ、命を守るという努力は、相当な時間、資金、労力、長期的な計画が必要であるが、目の前の命を救うため、活動を停止することができないボランティアが多いのもまた事実であり、経済的精神的にも危機的状況にさらされている保護団体や個人ボランティアは、多く存在すると思われる。HPやブログなどでは、表面上、うまく報告しているものの、Webで発信される内容が事実であるかは、活動している本人や内部関係者にしかわからない。事実上、運営管理の危機にあると知られたら、世間体や支援者から一斉に非難を浴びてしまう。客観的な立場で、手遅れになる前に、どうにかできる方法があればよいのだが、保健所などにも敷地や建物に立ち入るための強制力がないため、事件が起こるか、崩壊しなければ表に出てこないのが現状だ。

この男性も同様に、継続して自宅での猫の保護を行いたかったはずだが、結局、最後はこのような形で住まいを追い出されることになってしまった。

命を守るための保護活動とは...

この男性に限らず、日本の動物保護現場で起きている問題を、現実の事と受け止め、考える機会にしていただきたいと思う。

東京犬猫日和 

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