【ガンドッグスポーツを通じ犬との豊かな暮らしを楽しんで欲しい! ガンドッグトレーナー磯野麻衣子さん 】

「ラブラドールレトリーバー」や「ゴールデンレトリーバー」などのレトリーバー犬種と聞くと、日本ではその多くが家庭犬、もしくは盲導犬、警察犬などを始め、体に障害を持つ人の手助けをする介助犬を思い浮かべる人が圧倒的に多いが、元来、鳥獣の狩を手伝う為に作られた犬種、「ガンドッグ(鳥猟犬)」と呼ばれる狩猟犬の一種である。

英国で狩猟のオフシーズンに行われるダミー(練習時に使う布製回収物)を使用したワーキングテストをアレンジして行われているのが「ガンドッグレトリーブトライアル」というドッグスポーツ

一言でガンドッグと言っても犬種により猟での仕事内容が異なり、レトリーバー犬種は撃ち落とされた獲物を速やかに回収(レトリーブ)して、持ってくるのが役割である。欧米では今も本来の仕事である獲物の回収の仕事をしているレトリーバーは多く、またレトリーバーを飼う飼い主の中には「ガンドッグスポーツ」をやる為に飼う人も多い。英国ではこのレトリーバー犬種を対象としたフィールドトライアルという伝統的なドッグスポーツが毎年行われている。

日本においては故・森山敏彦氏がGRTAガンドッグ レトリーブ トライアル協会)を立ち上げ、日本における GRT(ガンドッグ レトリーブ スポーツ)の礎を築いた。しかし日本では欧米に比べまだ歴史の浅いガンドッグスポーツは、マイナーなドッグスポーツとしてのイメージが強いのが現状だ。

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そんな中、2016年一人の若きスペシャリストが英国から帰国した。磯野麻衣子さん(26歳)

高校卒業を機に、英国のガンドッグのトレーナーとして有名なフィリッパ・ウィリアムズ女史(Philippa Williams)の元へ初めて渡英。

その後、何度も渡英を繰り返し修業を続け、2014年ワーキングホリデーのビザを取得、フィリッパ女史のアシスタントとして活動する。その年の10月にはフィールドトライアルノービスクラスに初出場して優勝。もちろん日本人としては初めての快挙である。

英国の世界最大のドッグショーであるクラフト(CRAFTS)でのショーデビュー、ガンドッグコールドゲームテスト ノービスクラス優勝、オープンクラスで2位など数多くの功績を残し、英国ケネルクラブ・フィールドトライアルジャッジの認定資格を習得、2016年4月に愛犬のベスパ、ベリー、パフィンと共に帰国した。帰国後、Mighty Canine Campusを立ち上げ、ガンドッグスポーツの普及のため愛犬3頭と一緒に活動を続けている。

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インタビュアー:日本のGRTファンが待ちに待った磯野さんが帰国して一年近く経ちました。大変お忙しいと思いますが、現在の活動内容を教えてください。

磯野「出張してお伺いするプライベートレッスンとグループレッスンを中心に「ガンドッグとは何か」や「英国式の競技会でジャッジがそのような評価をするか」の座学のセミナーなども行っています。参加されているのはレトリーバー犬種だけでなく、他のガンドッグ犬種、ボーダーコリーや、スタンダードプードル、甲斐犬とかチワワミックスとかシェルティー、小型犬、和犬など犬種も様々です。」

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GRT競技といえばレトリーバーですが、レトリーバー犬種に限らずレッスンをされているのですね。

磯野「はい、私の目指すところは大きく分けて2つあります。1つは日本のレトリーバー達に、ガンドッグスポーツを通じて飼い主さんと共に豊かな暮らしを楽しんで欲しいという事です。日本の生活環境の中でストレスを溜めているレトリーバー達とそれに振り回されて苦労している飼い主さん達を見ると、彼らの作られた本来の姿であるガンドッグスポーツでエネルギーを発散させてあげたいと、心から思います。日々の生活の中にガンドッグのトレーニング方法を取り入れてあげるだけでも、驚くほどコミュニケーションが取れるようになります。」

磯野「2つ目は、犬種を問わずこの素晴らしいガンドッグスポーツを日本中の飼い主さんに広めていきたいということ。ガンドッグスポーツは飼い主さんと犬との共同作業によるドッグスポーツです。」

磯野「ハンドラーである飼い主さんと愛犬がお互い信頼しあい、心を一つにしないと成立しません。犬とコミュニケーションを交わしながら共に楽しみ信頼関係を築く、これは家庭犬としても最も大切な要素です。ガンドッグのトレーニング方法はあらゆる犬種にも効果があります。トレーニングレッスンは初心者コースも行っていますので、レトリーブすることが好きな子なら犬種問わず楽しく参加することが出来ます。もちろんレトリーブすることが得意でない子もプライベートレッスンなどに参加して実際におもちゃに興味を持ち、遊びを飼い主さんとシェアするトレーニングを行なっている方もいらっしゃいます。」

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日本と英国では犬の置かれている立場や環境が大分違うと感じますが、日本でのトレーナー経験もある磯野さんは、実際に日本と英国のそういった違いをどのように感じられますか?

磯野「犬の文化の違いはやはり感じます。犬と暮らしてきた歴史の違いは確かにあります。英国は犬と一緒に歩んできた歴史や文化があり、それがベースとなって「ガンドッグ」などのワーキングドッグが誕生しました。」

磯野「ワーキングドッグの仕事は人と犬との共同作業です。それが英国人の「犬は犬として尊重し、愛する」ことに繋がっているのだと思います。多くの英国人は犬が欲しいと思った時にショーウィンドウに入った子犬を衝動買いするのではなく、成犬時の大きさ・姿、その犬種の特徴や運動量を理解し自分のライフスタイルと照らし合わせて、ブリーダーから仔犬を譲ってもらいます。ブリーダーから逆に「あなたのライフスタイルにこの犬種は合わない」と断られることもあります。一方の日本では、犬が欲しいと思ったら簡単にペットショップで手に入れることが出来ます。お金があれば店員さんから断られることもありません。今でこそ犬を室内で飼う人も多くなりましたが、元々の日本の犬文化は外飼いの番犬文化です。犬を飼う目的が違うので犬とのかかわり方も違ってきます。犬と一緒に歩んできた文化がないので、どうしても人の都合で犬を見てしまっているようにも思えます。それ故「犬を人と同じように、可愛がり愛してしまう」ような、犬を擬人化してしまうことも起こるのだと思います。

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なるほど、犬を犬として尊重する文化があるからこそ、英国では犬をオフリードで連れて歩くことが出来るし、公共機関にも犬を連れて入ることも出来るのですね。日本と英国の犬文化の違いを肌で感じてこられた磯野さんだからこそ、出来ることもあると思います。今後の活動の方向性や目標などお聞かせください。

磯野「英国には犬との長く深い歴史があります。犬が好きな人もそうでない人も犬に対して理解があるし、尊重しています。それが犬にとっても暮らしやすい環境になっているのだと思います。それに比べると日本は犬と一緒に暮らすという歴史はまだ浅く、犬にとっても暮らしやすい環境とは決して言えません。でもポジティブに考えれば、逆に可能性は日本の方が沢山あるわけです。帰国してから一年足らずですが、沢山のガンドッグファンの方々によるご支援のおかげで、毎日楽しく飛び回っております。レトリーバーに限らず、物を持ってくる作業が好きな犬は沢山います。日本だからこそのガンドッグ スポーツも大いにありだと思います。」

磯野「今はまだ関東エリアから愛知県位までが活動の範囲ですが、ゆくゆくは全国的にガンドッグスポーツを通じて、犬と楽しく幸せに暮らす飼い主さんを増やしていきたいと思います。それと東京オリンピックまでの目標として、フリッパ・ウィリアムズ先生を日本に招いて日本での活動を見せて恩返しをしたいです。」

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フィリッパ・ウィリアムズ女史のメソットのホームページには「Maiko Isono」の名が今もチームの一員として紹介されている。7年前、言葉も理解できずに英国のガンドッグの世界に飛び込んだ彼女は、恩師の信頼と期待を胸に再び日本に戻ってきた。

今後の活躍に期待せずにはいられない。

東京犬猫日和

Writer:Osamu Tetsuiwa

Correction:Emi Sekiguchi

Photo:Maiko Isono & Maxine Furnandiz &東京犬猫日和

Movie:Harumati Yamamoto

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磯野麻衣子

http://www.mightyk9campus.com/profile

Philippa Williams
http://www.castlemansgundogs.co.uk
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