杉本彩さんインタビュー
繁殖、流通過程、無責任飼い主から「1頭たりとも奪われなくていい命のことを考える」
~官民連携で無責任飼い主ゼロ、殺処分という行政業務をみとめない~

杉本彩さんは、20代の時から捨て猫の里親探しをはじめ、不幸な猫や犬の保護を個人的に24年続けてきたが、2014年一般財団法人 動物環境・福祉協会「Eva(エヴァ)」を設立。2015年2月、同団体は公益財団法人としての認可を受け、芸能界の中でも長年継続して動物愛護の啓発活動を精力的に行っている。

取材当日も、ネスカフェ原宿で行われていた「ネコ市ネコ座with ピュリナ~ホゴネコ文化祭~」でのトークショーに出演されていましたが、そのお忙しい合間に東京犬猫日和の単独取材を受けてくださいました。

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東京犬猫日和では、横浜市で開催されました「HAPPYあにまるFESTA」にも取材で伺わせていただきましたが、その際、杉本さんが神奈川県動物愛護推進応援団長として、「官民連携」を強く訴えられていたのが印象的でした。今日は、杉本さんが長く、動物愛護の啓蒙活動に携わってきた経験から皆様に伝えたいことなど、その辺り詳しくお聞かせいただけたらと思っています。

杉本「例えば「殺処分ゼロを目指す」という取り組みで、行政ができることと民間ができること、それぞれが違うと思います。行政は動物愛護の軸を作り、民間はマンパワーを提供する。役割を分担し、協力し合い、一体とならなくてはと思います。動物愛護に関わる方の中には、行政と戦う人もいます。しかし、「意味のある戦い」なら戦うべきですが、「意味のない戦い」はするべきではないと思います。行政のやり方に異議を唱えるならば、こういう方法はどうかと歩み寄り、提案していくようなやり方、あくまで一緒に取り組みましょうという姿勢でないと「殺処分ゼロを目指す」という目標は達成できないと思います。」

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これまでに杉本さんは、環境省「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト」などで環境大臣や政治家の方々にも直接、「動物虐待、遺棄の問題、生体販売」、「日本における動物虐待の現状や殺処分の問題」、「ブリーダーやペットショップ等の繁殖や販売に至るまでの劣悪な環境の実態」など、ペット産業のあり方や飼い主の意識についての意見交換をされ、問題提起をされてきたと思いますが、行政のトップの方を目の前にして感じられてきたことはありますか?

 杉本「以前、当時の環境大臣を訪ね、殺処分に関する現状などを説明させていただく機会があり、資料なども全て揃えて「殺処分の減少はボランティア頼みによるもの」という事実をお伝えしましたが、実際に私たちが提示した資料に目を通し、大臣は「その実態を知らなかった。聞いていた話と全然違う」と驚かれたのです。周囲の役人たちは「殺処分数が減っています。状況は好転している。」という数字上の報告を上げていただけ、というのがよくわかりました。

殺処分が減った背景には、カラクリがあります。環境省発表の統計では右肩下がりに殺処分数が減少していますが、実際には処分されなかった犬猫をボランティア、動物愛護団体が救っているという実態があります。殺処分が減少、それは行政の取り組みによる成果だけではなく、その多くがボランティアによる活動とその貢献によって生み出されたことも知って欲しいです。また、私は「殺処分ゼロ」という言葉に違和感を覚えています。数を減らすことが「目標」になってしまっている部分があり、そういった「数字」にとらわれることではなく、「繁殖、流通過程、無責任飼い主から1頭たりとも奪われなくていい命のこと」を本気で考えるべきだと思います。」

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またボランティア団体などから、法改正をするにはいかに議員や著名人を上手に取り込むことが大事であるかといった声も聞こえます。実際、著名人である杉本さんにも多くのところからお声がかかるかと思いますが、環境省の役人や議員さんと直接面識もあり、意見交換のできる杉本さんが感じている「ジレンマ」などはありますか?

杉本「例えば、行政による規制強化を訴える活動をしている中で「業者が守られる仕組み」という大きな壁があります。動物愛護法の改正もその「仕組み」を通さなければ進まないので、「ペット業界寄り」という大きな市場であるペット業者を守るため構成になっていると言わざるを得ないようです。その業界から利益を得ている人、その業界に何かしらのうまみがある人が、既得権益を守るためだけに業界に都合の悪いことを排除するという、あらゆる分野での構造になっています。業界の構造自体が本当に問題ですね。

「動物愛護」の意識のある超党派の議員の方達が、オフの場や個人レベルではとても熱心に意見を聞いてくださるのですが、最終的に「各政党レベルでは取り扱われない」ということになってしまうのも事実。根回しの末、辿り着いた議員さんや著名人がいても、肝心の法改正の場につながらないことが多いです。

各議員の方々には、日々の地道な活動と、他の議員の方々から理解を得られ、本当の意味で手を取り合い、協力し合い、連携のとれるような活動をしていただきたいと思っています。インパクトの強い表現で動物愛護の人を取り込むために強気の発言を繰りかえしたり、人を批判したり。それらは、どんなに熱意があっても、決して多くの人に意見は受け入れられないということです。動物愛護が広く多くの人に受け入れられるよう、冷静に、客観的に協調性を持って活動を行って欲しいと、強く思います

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杉本さんはペットビジネスの現状に踏み込んだ「それでも命を買いますか?ーペットビジネスを支えるのは誰だ」という本を出版されましたが、著名人として大変勇気のいることだったと思いますが、実際にペット産業から「圧力」を感じるようなことはあるのでしょうか?

杉本「何度か、シンポジウムや講演会にペット業界の方がいらしてお話を受けたことはありますが、怖い思いをしたというようなことはありません。もし、そういうことがあったとしても、黙っている方でもないので。ネット情報は意識のある人しかキャッチが出来ない。そこだけじゃなくて、ネット環境のない人たちにも知ってもらえることも必要じゃないかと考え、その方法の1つとして本を出版しました。もっと幅広い層に伝えていく事で流れが少しずつ変わっていく。すぐに効果が表れなくても、諦めずに伝え続ける事が本当に大切です。」

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インタビューを終えて:

杉本さんの「動物愛護、啓蒙活動」は最近の流行りというものではなく、20年以上にも渡る深いもの。多くの保護団体や保健所にも自ら足を運んでいらっしゃいますが、感受性の高い杉本さんは過去には感情的になり、涙を流し、時に悔しい思いもし、活動をやめたいと思うこともあったといいます。しかし、愛する動物達のため、とにかく、冷静になり、客観的に物事を判断していくこと、行政と協力し合うことの大切さを、身を以て経験したそう。その上で、「人に伝えていくこと」をとても大切にされている杉本さん。「継続は力なり」一人でも多くの人に伝えたいという情熱はこれからも動物たちのために。

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杉本彩

女優、作家、ダンサー、実業家、プロデューサー、

ディレクター、公益財団法人 動物環境・福祉協会Eva理事長。

1987年 東レ水着キャンペーンガールでデビュー。

2015年3月、自身の経験を基にした「ペットと向き合う」(廣済堂)を出版。

2014年2月「一般財団法人動物環境・福祉協会Eva」を設立し、理事長を務める。

2015年2月には、「公益財団法人動物環境・福祉協会Eva」として公益認定を受け、

動物愛護の啓発活動を精力的に行っている。

神奈川県動物愛護推進応援団長

オリパラ事務局心のバリアフリー分科会構成員、上方朗読振興会名誉顧問、

京都動物愛護センター名誉センター長

全日本車いすダンスネットワーク特別理事も務める。

2016年3月、ペットビジネスの現状に踏み込んだ

「それでも命を買いますか? –ペットビジネスの闇を支えるのは誰だ–」

(ワニブックスPLUS)を出版。

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東京犬猫日和

Interviewer:Emi Sekiguchi

Writer:Osamu Tetsuiwa

Photo:Keiji Katsuba

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