大型犬ボルゾイ逃走から考える

9月26日未明から27日早朝にかけて、福岡県朝倉市で大型犬のボルゾイ6頭が逃走した事件。不幸にも逃走中に別の住宅で飼われている犬2頭が犠牲になってしまったが、28日昼までに全頭が捕獲された。

驚くことに飼い主である元ブリーダー(第1種動物取扱業未登録)の80歳代女性は15頭ものボルゾイを飼育していたにもかかわらず、1頭も畜犬登録をしていなかった。(※北筑後保健福祉環境事務所より)

都道府県によっては多頭飼育の場合届け出が必要であるが、福岡県にはその条例がない。たとえ条例があったとしても未登録では届けることはないだろう。

現在の法律では狂犬病予防法により、犬を所有したら生後90日以降そこから30日以内に居住している市町村役場・保健所等で登録する義務がある。違反すると二十万円以下の罰金である。

それでも全体の4割近くの犬が現在も未登録であろうと言われている。

ペットフード協会の平成27年の全国犬猫飼育実態調査によれば、犬の飼育頭数は全国で約991万7千頭と推測されているので、少なくとも300万頭以上の犬が登録されていない幽霊犬である。

昨今、4年後の東京オリンピックを迎える前に殺処分ゼロを達成しようという声をよく耳にするようになってきた。確かに犬の殺処分頭数は平成27年度の環境省の統計資料によれば、15,811頭と10年前より10万頭以上も減っている。しかし、保健所の犬の引き取り頭数も10万頭近く減っている。

その反面、返還・譲渡頭数は保護団体や動物愛護管理局の努力にもかかわらずほぼ横ばいの状況である。

平成24年度の動物愛護管理法の改正により、犬猫等販売業者に「販売が困難となった犬猫等の終生飼養の確保」という事項が加えられ、業者による持ち込みを保健所で断れるようになった。

殺処分ゼロは大きな目標の一つであるが、それだけでは登録もされない闇から闇へ消えていく不幸な命の数は減らすことは出来ない。

飼い主が決まってからの畜犬登録でなく、生産された時点での登録を義務化することはできないのだろうか。

15匹のボルゾイ達は、けして清潔ではないプレハブ小屋で飼育されてきた。現在、飼い主女性は全ての犬たちの所有権を放棄する意思表示を示してるとのこと。今後、保護団体に引き取られる可能性が高い。

適正な飼育環境で育ったとは思えないボルゾイ達をリハビリするには、ボルゾイやサイトハウンドの犬種を熟知している人たちの協力が不可欠である。

今後、15頭のボルゾイ達が幸せを掴むことを心から願いたい。

命を救うだけでは動物福祉とはいえない。


writer: 鐵岩修 Osamu Tetsuiwa

http://tetsu-wan.com

写真:Karen Arnold / Shutterstock.com

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