(3)動物保護施設で一体何が… 社会問題 /兵庫県

【大規模シェルターに犬、猫、豚…約200頭あまり...ずさんな動物管理の結末とは】

東京犬猫日和では2回にわたり、動物保護団体の崩壊についてレポートした。

動物保護団体の崩壊 〜ネグレクトになった保護団体〜

(2)動物保護団体の崩壊〜ネグレクトになった保護団体〜続編

ことの発端は、兵庫県内で2001年11月に特定非営利活動法人を取得している動物保護団体の代表、兼松氏が2016年6月下旬、「もう世話をすることができない、助けてほしい」と、他の動物保護団体にレスキュー依頼したことに始まった。

[動物保護施設]から[動物保護団体へのレスキュー依頼]

いったい何が起こったのか。

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この兵庫県にある “動物保護施設” は2001年、ある動物病院の患者として通っていた兼松氏の声で始まった。

当時、兼松氏は個人的に、他の大手動物保護団体のボランティアとして時々協力している普通の主婦だった。ボランティアスタッフとして活動しながら、保護動物に触れ合う中、通院していた病院で、「犬の保護活動は1000万あればできる」と話すと、この動物病院に勤務していたY氏がこれに賛同、動物病院の院長に掛け合い、兼松氏に足りない《動物を管理する知識》や《医療面》をこの動物病院がバックアップすることになり、兼松氏、Y氏他、全5名がそれぞれ数十万円を出しあい、共同出資して土地を購入、不足分は病院が出資、NPO法人を立ち上げ、代表には兼松氏が就任した。

志高くスタートした動物保護施設は大手動物病院のバックアップもあり、個人や繁殖場から飼育放棄された犬110〜120匹、猫80匹、豚、うさぎ、フェレット、鳥など、約200頭前後もの動物受け入れを行ってきた。

その大型保護施設がなぜ崩壊に至ったのか。紐を解く。

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【崩壊への道のり】

2001年、動物病院のバックアップでプレハブ1棟からスタートした動物保護施設。

ドッグラン付きの犬舎、冷暖房完備の感染猫専用の病棟など、設備を整え、受け入れ態勢を作った。

徐々に支援者も増え、他の保護団体との連携や保健所、動物専門学校とも良好な関係を保ち、インターン受入れなど、精力的に保護施設の運営を行っていた兼松氏。

センターからも他の保護団体からも、「どんな動物でも受け入れる頼れる存在」として兼松氏は信頼を得るようになっていたという。

ブログより。天井まで届くほどの支援物資、多くの支援者がいたことがうかがえる。

【動物保護施設からボランティアが減少】

2001年~2014年まで、関西地区にある動物専門学校の生徒たちが 飼育管理の研修 で毎年研修に訪れていた。しかし、2014年以降専門学校側は、この動物保護施設への研修を断るようになる。

当時の動物専門学校の先生から、この保護施設の実習を中止した理由を聞くと次の回答が得られた。

まず、施設内の状況があまりに悪く、生徒の勉強にならない。実態調査のため、現場に足を運んだが、ゴミと区別がつかないほどの支援物資が山積みになっており、看板もなく、犬の鳴き声を聞いてやっとここが保護施設かなとわかる程度であった。施設内はゴミと動物が混在し、保護している動物の状態も良いとは言えず、代表である兼松氏の生徒への態度も横暴で、学校としてはこれ以上生徒を実習させる事はできないと判断した。

という。

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実は2012、2013年ごろから、この動物保護施設の周りでは 悪臭 衛生問題 に加え、兼松氏の態度などを巡る問題が、動物専門学校の生徒たちからだけではなく、近隣住民やボランティアから声が出はじめていた。

その点について兼松氏に聞いてみると、「専門学校の生徒が実習に来なくなったのは、挨拶や実習態度について注意をしたら、それを悪く受け取られたようだ。」という。専門学校側の意見とは食い違いがあるようだ。

支援を募る内容や、施設内の写真も動物保護施設のブログに公開され、どの写真もスタッフから楽しい日常として紹介されている。

“衛生観念の違い”といえばそうなのかもしれないが、この施設では長期間にわたり、衛生管理、個体管理の意識が、動物病院のバッグアップがありながら希薄だったようだ。

この状態を見ても「生きてさえいれば、何の問題があるのか」と話す、動物保護ボランティアたちもいる。

衛生観念や価値観の相違、受け取り方の違いでも、意見が分かれるようだ。

日常的にブログなどを更新、施設の様子を伝えていたこの施設では、多くの犬、猫に加えてフェレット、うさぎ、鳥や豚などの動物も保護し、世話をしていたというのだから

ブログより。飼育されているフェレット。その背景には荷物がぎっしり。

当然、その数だけ、相当な労力が必要だと容易に考えられるが、掃除、餌やり、散歩といった毎日必ず行わなければならない作業に必要な 常勤ボランティア数 を確保できていなかったのは問題だ。

ブログより。全頭を散歩するのは難しいが、連れ出せる元気な子は散歩にも出ていた。ヤギもいた。

こうした世話は毎日365日、命が続く限り続くのだから「命を預かる責任」は重い。

動物を扱うものなら誰もが肝に銘じていることだ。

ブログより。飼育していたという豚(兼松氏によるとこの豚は、6月ふれあい動物を行う園に引き取られたという)

2013年、2014年にも、この施設は維持が危機であることを公表し、ボランティアの募集を継続的に行い、NPO内でも会議を開き、“施設老朽化に伴う再建費用の募金キャンペーン”を提携病院のHPでも公開し、3度PRを行ったが、結果、再建に至る費用の収集はできなかったと代表の兼松氏は話す。

ブログより。

NPOの運営費だが、支援金振込先の《兼松氏名義のNPOの銀行口座》は、バックアップしている動物病院が保持、管理をしており、「兼松氏の活動費は、動物の譲渡費用や支援金を里親や支援者から現金で受け取った中から捻出し、活動実費を差し引いた残額は病院側に現金で渡す形で、運営を行っていた」と兼松氏が資金の流れについて説明した。

人数確保については、スタッフを募集をしても、保護施設の場所が最寄りの駅からバスで約3-40分、片道500円前後で、不便ということもあり、車で通勤してくれる常勤ボランティアの確保は難しく、またNPOで賃金を支払い、月12万円で雇用していた若い2名の女性スタッフが、2016年3月末で辞めたあと、(兼松氏が最後に声をあげる)2016年6月末には、動物病院から派遣されてくる動物看護師が動物の治療の手伝いに来る以外、世話や掃除にくるボランティアはほぼ、いなくなっていたという。動物たちの細かな世話に手が届かなくなるのは当然だ。

(※この職員は2016年7月、労働基準監督署に駆け込んでいる)

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ブログより。写真の端々から、施設の老朽化が垣間見える。

多くの老犬、負傷した犬猫を抱える施設内には、治療や世話が十分に行き届かず、そのまま施設内で、亡くなる動物たちもいた。(その様子はレスキュー時に発見された瀕死のパピヨンのジュニアくん、亡骸で発見された黒猫の遺体でもお伝えした通り。

この施設では、以前から、亡くなった動物たちを、安価で処分できる行政に引き取ってもらっていたという。

死亡した小型犬や猫は施設内にある、〖冷凍庫〗の中に保管し、頭数がまとまった時や大型犬が出た時にまとめて処分に出していたという。

行政にゴミとして処分された犬猫たちのお骨は当然拾ってもらえることはなく、そのまま処分されていた。

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2016年6月末、兼松氏が、他の保護団体にレスキュー依頼を行い、少しでも犬猫たちを施設から出し、新しい受け入れ先を見つけようと開始したのが、全頭の里親募集だった。

何度か危機を迎え乗り越えてきた保護施設だったが、15年間の活動の中、兼松氏自ら「これは崩壊だ」と口にしたのはこの時が初めてだった。

No5 けいちゃん 雑種 推定14歳 疥癬 おとなしい

No 9 けんち オス 推定3歳 13キロ 元気がいいそう

No29 はる 雑種 高齢 7キロ 歩行困難 皮膚疾患

※里親募集:http://blog.livedoor.jp/wanlife1/より

様々な事情、場所から保護され、やっとこの動物保護施設にやってきたものの、施設内で感染したと思われる疥癬の蔓延も見られた。動物病院のバックアップがあり、「治療していた」というのだが、この施設が、本当に全頭数の飼育、健康管理ができていたかも定かでないのが実情だ。

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▼こちらは現在、すでに他の団体に保護され、治療を行っている雑種の高齢犬。

体重は5.65kg。心疾患、皮膚疾患、下痢の症状もあり現在、治療を開始している。

保護施設をバックアップしていたという病院側はこの子の症状を把握していたのだろうか…

角膜潰瘍や停留精巣もあることがわかった。看取り覚悟の保護、治療となる。

レスキュー後、治療が必要な犬の継続治療の協力を求めるため、バックアップ先の動物病院に、カルテ開示を求めるが、その犬の記録自体がないため、引き継ぎができないと言われた子もいる。

「崩壊」と兼松氏自身が白旗をあげるまで、約15年もの長い間、この動物保護施設も動物病院も「努力はしてきた」という。確かに、里親が決まり幸せになった子もたくさんいるが、引き取り手のない犬猫に関しては、この施設内で生涯を過ごさなければならず、瀕死の末期状態になっても、十分な世話がされず、ひっそりと息絶えた動物たちもいることも、心に留めておかねばならない。

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【保健所は】

年2回、この保護施設に立ち入り調査を行っていたという管轄の保健所。2001年〜2016年までの年2回の記録を辿ると “衛生問題の改善” が15年にわたり問題になっていたというが、代表の兼松氏の「必ず改善します」という言葉を信じ、調査が終わっていた。

2016年6月、この問題が明るみに出ると保健所への通報が相次ぎ、6月28日、7月22日、7月28日、立ち入り調査を行い、動物保護施設に衛生状態の改善指導が行われた。

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6月28日犬約70頭、猫約85頭 →他団体やボランティアの協力により、30頭近い犬が引き出され、7月28日時点では犬40頭、猫80頭になったという。(保健所職員による報告)

多くの猫は病状が重く、エイズ、白血病を患っており、引受先が見つからず、まだ施設にいるという。

“今後、この保護施設は、NPO代表兼松氏の辞任を承認し、8月1日より、新体制で動物病院が引き継ぎを行い、行政の指導管理下のもと、新たに保護施設を継続して行う意向

“新体制が整うまで、保健所はこの保護施設の監視を継続、犬猫を譲渡することは控える” という。

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こうした保護施設のキャパオーバーによる諸問題は全国各地で起きている。

この施設は結果としてネグレクト、崩壊という状況に陥ってしまったが、これが日本で起きてしまったこと、また、氷山の一角に過ぎないということを皆様に考えていただきたい。

※ネグレクトの定義→ネグレクト参照。

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【殺処分ゼロという言葉は どこへ向けるべきか】

「殺処分ゼロ」という言葉が出はじめたことから、全国各地自治体(保健所や動物愛護センター)は一時期、非難が殺到した。

『収容された犬猫を殺すな!』各自治体はこの言葉に頭を抱えた。

....保健所が悪いの?....

飼育放棄で犬猫を持ち込む無責任な飼い主。

保健所の職員はその飼い主を窓口で説得する「最後まで責任を持って飼うことができないか」「あなたが放棄すればこの子は処分されるのですよ」

その脅し文句にもひるまない飼い主は、犬猫を保健所に置いていくのだ。

状態の良い子ならばできるだけ譲渡に向けて新しい飼い主探しをしてあげたい、そう誰もが思う。しかし、その中には譲渡に向かない、職員も手を焼いてしまうほど、噛み癖のある大型犬もいる。そうした犬を無責任に譲渡することで、新しい里親宅で事故でも起こったらこれも行政の責任になりかねない。やむを得なく処分をすれば苦情が殺到する。

「殺処分ゼロ」という言葉に押しつぶされる職員は、どうにかして生きる道を与えたいと、動物保護団体に委託をする。そこから先は、保健所は処分をしなくても済むことになり、見かけ上の「殺処分ゼロ」を達成することができるのだ。

しかし、保健所から保護団体へ移動した犬猫たち全てが、本当に幸せになるのだろうか。

平成26年度、環境省によると保健所に収容された犬の頭数は53,173頭、猫97,922頭

151,095頭もの犬猫が保健所に収容された。https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/s...

その動物たちが、全て民間の動物保護団体に「殺処分ゼロを達成するため」に押し寄せたとしたら… 今回のこの保護施設のように、努力を重ねても崩壊してしまう状況になっても「仕方がない」と言わざるを得ない。

飼育放棄される犬猫の数が多いのにも関わらず、それに輪をかけて大量生産を続ける繁殖業者がいるため、行き場のない犬猫たちが溢れかえるのは当然だ。

いつ訪れても かわいい子猫や子犬が並ぶペットショップ。

購入する人がいれば、売上につながり、また喜んで生産するものがいる。ペット業界の巨大な資金は、私たち一人一人が支えている。

保健所での「殺処分ゼロ」という言葉を発するより先に、まずはペットショップで「命を買う事」「繁殖」について考えるべきではないだろうか。

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近年、動物繁殖場や動物愛護センターから、動物愛護団体が処分寸前の犬猫を引き取り、殺処分を減らす努力を行っていることは、多くの人に評価されている。

しかし、それらは、あくまで、保健所に収容された犬猫や繁殖場の犬猫たちが動物保護施設に移動したにすぎない。

日本の動物保護団体はほとんどがボランティアで成り立っている。新しく飼い主を見つける、命を守るという努力は相当な時間、資金、労力が必要だ。

今回の保護施設も資金、労力不足により危機に陥ったのだが、このような危機的状況にさらされている保護団体は、実際多く存在すると思われる。

しかし、動物保護団体のプライドや意地もあり、ギリギリまで表には出ないのが現状だ。

表沙汰になると、個人飼育放棄者や虐待、ネグレクトを追求してきたはずの動物保護団体が、実は自らも、資金難から保護場所の確保ができず、無許可でシェルター運営を行っていたり、保護した動物の管理が行き届かず、保護した動物をケージに閉じ込めっぱなしにしていたり、糞尿始末が間に合わない中に係留していたり、医療にかけられず放置していたりする。

HPやブログなどではうまくやっていたものの、事実上、運営管理の危機にあると知られたら、世間体や支援者から一斉に非難を浴びてしまう。

この保護施設も同様に、できるなら隠蔽しておきたかったはずだが、多くのボランティアや関係者が関わってきただけに、こっそり崩壊することができなかった。

そして、NPO法人として責任の所在が問われているため、現在、このNPOでは信用回復のため、代表だった兼松氏を辞任させ、保健所の指導に従い改善への努力を新体制で行っている。

この保護施設の改善を願うとともに、日本の動物保護現場で起きている問題を、現実の事と受け止め、皆様に考える機会にしていただきたいと思う。

東京犬猫日和 

※記事掲載の写真は代表の兼松氏、協力団体の許可を得て掲載しており無断転載を禁じます。

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